お客さまの声に脊髄反射は禁物|冷静な判断が必要な理由

「お客さまからこんな問い合わせがあったから改修をお願いします!」サービスを運営してるとこういった事例に遭遇することが多々ある。

もちろん、ユーザーの声に真摯に対応することは大事だし、スピード感をもって改修すれば利便性が上がってサービス価値が向上するチャンスでもある。

しかし、往々にしてよくあるのが、問い合わせの内容(お客さまが言うままの内容)をそのまま要件にして改修してリリースしてしまうこと。いわゆる脊髄反射で「お客さまが言ってるんだから!」「サポートからの要望です!」と、慌てて対応してしまうやつだ。

脊髄反射対応の危険性

具体的には、対象のページに説明文を追加したり注記を追加したり、デザインや機能をいじったり…などなど。みんなユーザーが言ってるんだからよかれと思ってやってるけど、このやり方だと結果的にはユーザーにとって不利益な状態になってしまうことに気づかないことが多々ある。ほんと要注意。

実際の事例

先日も、A社の案件で同様のことがあった。あるページでサブスクの料金周りでお客さまから問い合わせがあったと。それもややクレームっぽい内容だったそうで、「サブスク案内ページに説明や注記を追加してください。それもプラン選択のボタンと、アクションボタンのところに」といった依頼だった。

結果から先に言うと、個人的には不本意な対応になってしまった…。なので、自戒としてメモ。

問い合わせ対応で検討すべきポイント

問い合わせ対応では、何も考えずに脊髄反射で対応するのではなく、一度立ち止まって以下のことを検討しなければならない。

  1. 問い合わせ数はどれくらいなのか?1件?それとも10件以上?
  2. その問い合わせ内容はユーザー視点で問題のあるものか?
  3. 問い合わせの内容はユーザーシナリオを阻害するものか?
  4. その要件は対象ページのゴールの障害にならないか?
  5. 今対応しなければならない優先度のものなのか?
  6. そもそもカスタマーサポート側で対処しきれない質量のものか?

少なくともこれらについて部署内、チーム内で検討し、対応が必要かどうかの可否を判断したい。そのうえで対応するならデザインおよび開発要件の検討、他案件との優先度の整理。ここまですり合わせたうえで改修に進めたいところだ。

なぜここまで慎重になるべきか

なぜそこまでするのかといえば、問い合わせをしてくる(クレームならなおさら)ユーザーは自分にとって都合の良いように主張しがちだからだ。強い言葉を使ってくることも多い。なのでユーザーを頭から信じ切ってはいけないし、本質を見極めるべく腰を据えてユーザーと向かい合う必要がある。

もちろん、こちらが見落としていた観点やバグを教えてくれるケースも多々あるので慎重な対応が求められる。

サポートチームの事情も考慮

そして同時に自社のサポートチームの状況も把握しておく必要がある。サポートチームの人数や体制、運用次第で問い合わせの取扱、エスカレーションが変わってくるので。ともすれば、サポートチームも自分たちの仕事が楽になるように、問い合わせが少しでもあればすぐ対応依頼を投げてくるケースがよくある。これほんとあるある。いや、気持ちはわかるけどそうじゃないぞと。

今回のケースの分析

実際、今回のケースだと急ぎ対応をと依頼してきた割には、問い合わせ数は1件だけ。さらには、対象ページから決済完了までの導線上のページで、問い合わせの内容についての説明や注記はしっかりと案内されている状態だった。

こうなると、ユーザーの見落としは明確だし、そもそもたった1件のために実装してまで改修するんですか?って話になる。

さらに言えば、ビジネス的に最重要であるプラン選択やアクションボタン周りに要素を追加しちゃうんですかと。CVRやKPIに影響出る可能性ありますよと。なので、UIデザインはもちろん、UX観点からも今回は対応不要だと主張した。そもそもサポートがしっかり説明すれば十分なレベルだったので。

苦い結果

まあ結果としては、サポートチームの現状と関係性を考慮して、簡潔な説明を追加することになったわけで…。うーん、間を取ったみたいな着地だけど、正直こういった対応が積み重なるとチリツモで分かりづらく使いづらくなっていくんだけどな。もったいない。

今日の気づき:お客さまからの問い合わせに対して脊髄反射で対応するのは危険。一度立ち止まって、問い合わせの背景や数、本当に改修が必要かを検討することが重要。たった1件の問い合わせのために、重要なコンバージョンポイントをいじるのは本末転倒だ。自分の力不足でもあったけど、次また同じ事例があればしっかりと踏ん張りたい。

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この記事を書いた人

フリーランスのWebディレクターとして活動中。5回の転職を経て気づけばフリーランスで個人事業主になっていた。アラフィフになって物忘れが激しくなってきたこともあり、日々の仕事で思ったことや気づいたことをメモっておこうかなと。

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